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貧困とDVには関係がある!? 『最貧困女子』

 

最貧困女子 (幻冬舎新書)

最貧困女子 (幻冬舎新書)

 

 

 

1970年代には「一億総中流」と喧伝された日本。しかし、今や「一億総貧困時代」の到来さえ、ささやかれ始めているという。そんな昨今、果たしてみなさんにとって「貧困」は、身近なテーマか否か?
 
昨年、生活保護(以下、生保)をテーマにしたテレビドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」(2018年7~9月、フジテレビ系)が放送された。
 
フィクションとはいえ、TVという影響力・発信力のあるメディアで、主演の吉岡里帆さんが演じた「ケースワーカー」という職種や、生保受給者とその家庭や子どもの抱える問題など、「外から見えにくい世界」が可視化されており、お茶の間でも注目されたことは有意義だったのではないだろうか。

■貧困の実態や問題解決に向けて。私たちは今どんな課題を抱えているのか?

 

例えば、このドラマに登場する生保受給者は、年代・性差も、受給に至る背景も、一様ではなかった。貧困当事者のこうした多様さに、自分の認識とのギャップを感じた人もいただろう。
 
というのも、私たちはつい、ほんの一例を見聞きしてそれを全体像だと思い込み、「貧困になるのは、〇〇な人」「貧困は自己責任」などと、決めつけてしまいがちだからだ。
 
では実際のところ、貧困の実態や問題解決に向けて、私たちは今どんな課題を抱えているのか。そのシビアな実情を教えてくれるのが、『貧困を救えない国 日本』(阿部 彩・鈴木大介/PHP研究所)だ。
 
 本書は、『最貧困女子』幻冬舎)などの著書があるルポライター鈴木大介氏と、『子どもの貧困』(岩波書店)などの著書がある社会政策学者・首都大学東京教授の阿部彩氏の対談をまとめたものだ。

■貧困問題を追いかける「虫の眼」と「鳥の眼」によるコラボ

 

これまでセックスワーカーほか、貧困当事者たちや支援者たちの声を拾うフィールドワークを行ってきた鈴木氏は、いわば貧困問題に関する「虫の眼」の持ち主だ。
 
対して、貧困国でのODA経験をはじめ、社会保障の国際事情にも精通し、各種の統計データ分析や政策提言などで貧困解消に向けた活動を行ってきた阿部氏は、「鳥の眼」の持ち主である。
 
本書では、経験値と着眼点の違う2人が、お互いに情報や示唆を交換し合い、時に見解の相違を交錯させながらも、「貧困問題の解決」という共通の悲願に向けて、越えるべき壁をひとつずつ洗い出していく。
 
本書で語られるその切り口は、貧困の認識、教育現場、ソフトヤンキー、セックスワーカー、高齢者、支援者、消費システム、精神疾患、メディア、地域コミュニティ、政治、財源など、多岐にわたっている。

■貧困とDV、精神疾患は関係しているのか? その解決策は?

 

「貧困の認識」という点では、鈴木氏が「貧困」の「貧と困を分けて考える」ことの重要性を訴えている。
 
貧とは、貧しいけど心身は正常な状態にある人。一方で、困は心身の問題のような社会的困窮や生活問題を抱えていて、ブラック企業での就業による精神疾患などが原因で、
 
働きたくても働けなくなった人、DVなどの後遺症に悩まされて働けない、といった人も含まれる。そして、それぞれにおいて、対策を分けて考えることが求められているという。
 
鈴木氏が現在、特に「困」の立場の人の擁護に手厚いのは、4年前に自身が脳梗塞で倒れ、その後数年、高次脳機能障害を背負った経験があり、人並みに動きたくても動けないことのつらさをよく知るからだろう。
 
一方で阿部氏は、貧困層に対する誤認識が世に蔓延していると指摘する。その代表例が「貧困=シングルマザーや20代までの若年女子」という認識だ。データによれば、貧困は「二人親家庭、中年女性、高齢者」の方が、数的には多いのが現状だという。
 
2人の共通認識としては、若年にせよ中年にせよ、貧困女性の多くには、親や配偶者からの心身へのDV問題とその後遺症が見られるという。
 
鈴木氏が「シングルマザーになった後に、セックスワーカーになった女性の精神疾患率の高さに驚いた」と言えば、阿部氏が統計データを引いて「母子世帯の母親の抑うつ傾向は35%。二人親世帯の母親は16%」と、シングルマザーの抱える抑うつリスクの高さを補足し、「DVをもっと大きな社会問題として取り上げるべきだ」と訴求する。

■傷ついた人を「そのままでもいいよ」と受け入れる「社会的包摂」が大切

 

こうしたDV被害他による精神疾患者の貧困問題の解決をめぐっては、鈴木氏が、精神科を受診した段階で、貧困化の抑制につながる公的扶助とつながれるシステムの必要性を訴えている。
 
その意見に同意する一方で、阿部氏は「社会的包摂」の大切さを訴える。「社会的包摂」とは、心身が傷ついた人をすぐに働けるようリハビリさせるのではなく、「そのままでもいいよ」と受け入れて休ませてくれるような、いわば“懐の広い社会の在り方”である。
 
日本がそんな成熟した社会になってくれることを、ぜひとも願いたいものだ。
 
その他、多岐にわたり貧困の現状がわかる本書。読んで感じたのは、第一に論点のわかりやすさだ。本書は、学者同士のこむずかしい専門用語の応酬でもなく、ジャーナリスト同士の現場感覚だけのぶっちゃけ論戦でもない。
 
研究者とジャーナリストが、本音で向き合いつつも、お互いの認識不足を素直に認め、話の軌道もちゃんと修正し合いながら筋道を立てていくため、「いったい何の話?」と読者が置いてきぼりにされることはない。また、専門知識なども不要で読めるので、ぜひ、幅広い年齢層の方に本書を手に取ってみていただきたい。
 
日本が抱える社会問題は、国民全員の課題でもある。貧困が身近にあろうとなかろうと、一人ひとりの意見が世の中を動かす。そのためにはまず、本書で貧困の現状を知ることから始めてみてはいかがだろうか。
 

 

最貧困女子 (幻冬舎新書)

最貧困女子 (幻冬舎新書)